

みなさま、ごきげんよう。
今年の冬が、やけに長いように感じるのはおば茶記者だけでしょうか。
「燻製を専門に作って販売するお店が、われらが西風新都にできたんですよ」
という情報提供を受けましたので、おば茶記者、さっそく取材に行ってきました。場所はアストラムラインの広域公園前駅の近く。以前、取材したことがあるつけめん屋さん「周一」さんとは店舗が背中合わせでございました。なんだかケーキ屋さんのようなおしゃれな外観。

「こんにちは〜。」と、入ると、なんていうか、山小屋の暖炉の傍みたいと申しましょうか、すごくいい木のにおい。ふんわり明るくステキな笑顔の奥様が出迎えてくださいました。
「おば茶記者と申します!」
・・・と、ご挨拶を始めたところ、おば茶記者の後ろからどわっと団体のお客様がやってこられました。


皆様の注目のお品はというと、皆さん口ぐちに「リエットは今日ありますか?」「リエット!」など、仰っております。・・・リエットとは、簡単に申し上げれば西洋版お肉の佃煮でございます。
『燻製屋さんならお目当てはハムとか、ソーセージとか・・・でなくって?!』
いえいえ、ハムとかソーセージとか豚肉を扱うからこそリエットができるのでございます。
「リエット」。もとはというと、豚ばら肉とか肩肉とか形を整えるために出た端切れ肉を無駄にしないために工夫された生活の知恵的なお料理。作り方はシンプルで、塩をしたお肉をみじん切りにして、ラードのなかにぶっこんで弱火でゆっくりゆっくり煮てペースト状になるまで練って、壺とかに詰め、溶かしたラードで蓋した保存食。パンにバターを塗って食べるがごとく、パンやクラッカーにつけて食べるとそりゃもう最高においしいのです。
が、このリエットを作るには、低温のラードの中で揚がらないよう、焦げないよう、ほろほろになるまで長時間煮込みます。あくまでお肉は「しっとり」したままホロホロにしなければなりませんので、作ってる最中、目が離せない。シマヘイのリエット、いつか賞味してみたく存じます。。

今の時間、ちょうど手羽先が出来上がったところでした。

チップを見せていただきました。細かいチップであります。桜はやっぱり香りがイイですね!


出来上がったばかりの新商品「塩レモン味」の手羽先。ほんのり黄色く、ぷりっとした仕上がり。もう見るからに「ぎゅっ」と旨味が詰まっていそう。


シマヘイのご主人、島田陽平さんはちょっとシャイな職人さん。背が高くてシュッとしておいでです。
おば茶)「どうして燻製専門店にしようと思ったのでしょうか?」
ご主人)「え〜、もともと私は燻製づくりが好きで。
脱サラして始めました。」
ちなみに前職は何かと申しますと、なんと設計士だったとのこと。まさかの、インダストリアルな分野からの転身でした。
「はい、もともとはフェリーとか、
タンカーとか設計していて・・・。」
鉄板相手の設計から燻製って、コペルニクス的転換デスよ。
夫が脱サラすると聞いたときには、
「そりゃもうびっくりしましたーー!」
と仰る奥様。
「でも本当に好きなんですよね。
この味にこのお酒があうんじゃないかとか、
すごくつきつめて考えているんでね。」

「燻製にあうワインとビールも置いて
一緒に味わっていただけたらなと思って」
お話を伺っていたおば茶記者、続いてはお店の片隅に置いてあるビールに、眼が釘付けになりました。お店に置いてあったのは、スコットランドのオーガニックビール「ブラックアイル」でしたっ!スコットランドのインヴァネス地方の銘醸です。お味の特徴はなにかといいますと、日本のビールに比べて麦汁濃度が濃く、アルコール度数が高いことにあります。

今、スコットランドっていうと、朝の連続テレビ小説でみなさまおなじみですよね。「スモーキーフレーバーがっ!」「上質のピートが!」と、叫んでいるあのドラマ。マッサンという主人公が必死になってつくろうとしているのがスモーキーフレーバーのウィスキー。原料となるモルトを、火をつけたピート(泥炭)で乾かすんですが、燃やせば煙が出るわけで、結局乾かすと麦芽は自然に燻製された状態になって、独特の香りがつくということなんでしょうね。
そんな話をすると、奥様の目が輝きました。
「ウイスキーにもウチの燻製めっちゃ合いますよ!
ぜひ試してみてくださいっ!!!!!!!」
今晩の晩酌はビール→ウイスキーの順番で完璧!!おば茶記者の頭の中で、おつまみ献立が構築されていくのでありました・・・。

「いま、ちょうど 新商品の塩レモン手羽先 が
出来上がって・・・すぐ包装しますから!」
という奥様の軽快なやりとりが聞こえます。お客様の波が過ぎ去った後、おば茶記者、あれもこれも食べてみたくなりまして・・・。
がっつり購入して帰宅したのでありました。
自宅に戻っても、仕事は続いています。そう!味わって、皆さまに克明にご報告しなければなりますまい!!!


『えっ!こんだけの量を一人で飲み食いするんかい!』
と、思わずツッコミ入れた読者サマ!心配ご無用。おば茶記者の家にはですねえ、食いしん坊の助っ人がいるのでございますよ。私の父(昭和ヒトケタ!)でございます。

帰宅後、父が寺の会合から帰ってきたところを捕まえて試食の開始です。
まず最初はローストビーフから。
ローストビーフは黒毛和牛の最上ランクA5に限りなく近い「A4」のお肉を使用。赤味断面のサシをご覧ください。こちら「薄切りにしてお召し上がりください」とアドバイスがありました。奥様のご助言に従って、我が家で一番よく切れるペティナイフを使って薄く薄くスライスいたしました。

父) 「・・・うまい。(これ以上のコメント出ず。
もくもくと肉を噛みしめている)」
おば茶)「噛みしめて出てくる肉の味がスゴイ!
あとから感じるブラックペッパーの香りもイイね!」


黄身に火が入らないよう、低い温度でゆっくり燻した燻製煮卵。どうしよう、これホントにおいしいよ。父と娘のテンションはここにきてギアがトップに入りました。

「おば茶よ…この『燻製にあう飲み物』を忘れておらんかね?」
おじじ記者の所望により、スコッチビールを抜栓いたしました。このスコッチビール、驚きの味でした。濃い琥珀色のビールは甘くて、さわやかに苦い。
この個性が「スコッチビール」たるゆえんなのかどうかよくわかりませんが、この個性実にイイ。なんていうか、鼻腔に抜けていくときの「ふわあっ!」とした香りはワインのような薫香といいますか、花束を抱きしめたときのようなといいますか、なんとも素晴らしい芳ばしさがありました。冷蔵庫から出したばかりの状態より、少し、室温に戻ったときのほうがより香りが立つようです。

「ううむ。大き目のグラスで、
ゆっくり味わいながら飲むべきビールだな。」
とは、父(昭和ヒトケタ)の見解。流石は 60年 ビールを愛飲してきたキャリアは伊達ではございません。この深い味わいのビールをちびちび口にしながら、燻製ナッツを口に入れてみたりなんかしたら。ご想像の通り、もうやみつきになるのですよ。

「ちょっと、ナッツ(隠さないで)出したら?」
と、催促を受けることになります。この燻製ナッツは、軽やかな歯触りでした。香ばしさのなかに確かな木の香りの衣をまとっているのがなんとも心憎い仕上がりで。もともと「木の実」なのですから、木の香りをまとって美味しくならないはずがない。かしゅっ、と噛みしめほんのりと鼻腔に立ち上る香りが、とても繊細でした。そう、全体的にとてもお味が上品なのです。




お肉がぷりぷりです。
こちらもナイフでそぎ切りをしながらいただきました。
おば茶「鶏皮のコラーゲンがぶるぷる。
だけど、身はぎゅっと締まってる!」
父 「レモン塩のも、うまい、うまい。」
手羽元もあったのですが、撮影前にすでに姿が消えていました。あれ、おかしいなあ(笑)
この辺で、スコッチビールから「国産ウイスキー2大メーカーの飲み比べ」が始まりました。あらかた燻製を喰いつくし、「ウイスキーにはチョコレートも合うんじゃあ!」と、手近に転がっていた駄菓子まで引っ張り出す始末。
気が付けば、いつの間にか母までもが参戦。
母 「あらあ、燻製っていっても、
外国のみたいに塩味がきつくなくって食べやすいわねえ!」
おば茶記者の「家呑み会」は夜更けまで続いたのでございました。

・・・手振れひどすぎですね。えー、まな板の上の木べらはクリームチーズを掬ったものでえ〜、くりちーはぁ〜〜。お恥ずかしいですが、この時、ものすごくいい気分で酔っぱらっていましたよ・・・・。

シマヘイさんの燻製は、日本人の口に合う燻製です。燻したての燻製は、すごく上品に香ります。塩も控えめに感じました。味付けがとても優しくて、木の香りが健やかで、本当にあのご夫婦のほがらかで温かいお人柄がそのまま味に表れているかのよう。
だから素材の味わいが引き立つのです。だからお酒もすごく美味しく飲めてしまう。おつまみとお酒が互いにいいところ引き出しあうとスゴイ相乗効果を生み出します。「マリアージュ」なんて言いますが、この夜はまさにその言葉がピッタリで。美味しいものを家族で囲むと、笑顔が広がり会話が活発に交わされます。
久々に家でゆっくり飲んだおば茶記者、たまには家呑みもいいもんだな。
次はおススメワインと一緒に試してみよう・・・と、思ったのでございました。

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